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それはひとりの何気ない軽口がきっかけだった。 いつものようにランカを学校へ見送り、ああ今日も我が妹は可愛いなあとへらへらしながら出勤したとき、同僚がにやにや笑いながらオズマの肩を叩いた。
「ようオズマ。おまえも大変だよなあ。家でも職場でもガキの面倒ばっかで」 気にしていることをずけずけと言いやがって。心の奥底ではこの同僚の言い分に深く同意していたオズマは、みずから率いるスカル小隊の実力を示すべくひとつの名案を思いついた。 「こうなったら俺の苦労を公表して同情を・・・じゃない、スカル小隊のすごさを見せ付けてやる!」
カナリアはともかく、その他の学生組を預かっている以上、見た目は少々頼りないかもしれない。だがミハエルの射撃の腕はプロだしルカの情報分析能力は頼りになる。カナリアは背中を預けることのできる実力者だ。
(えーっと。あいつなんか特技あったっけ)
「というわけで!今度の日曜は特別訓練『スカル小隊だってすごいんだZE☆大会』を開催する!」 「てめえら!人の話を聞けぇぇぇ!!」 「「「はい?」」」
ばんっ、とテーブルを叩く上司にはじめて気づいた顔をした三人は、互いにきょとんと目を見合わせた。
「いいか、おまえら。俺たちのチームは平均年齢が低いぶん他のやつらに少々甘く見られているようだ。そこでこのスカル小隊の力を見せ付けるため企画したのがこの特別訓練だ」 まるでまともに受け取ろうとしない三人に、オズマが怒鳴り返そうと口を開いた瞬間ぽこんと後頭部を殴られた。
「いい加減もっとましな発案をしたらどうだ。そもそもちょっとからかわれたくらいで何を本気になっている。誰もがスカル小隊の実力は認めているはずだ」
ぼそっとアルトとミハエルが同時に突っ込んだ。
「だがまあチームの結束を確認する意味で特別訓練とやらをするのに異論はない。なにかいい考えでもあるのか」 首を傾げながらルカが問いかけると、オズマはにやりと笑みを浮かべた。
「いや、今回やるのは戦闘訓練ではない。むしろプライベートに関係している」
そろそろ飽きてきた、とアルトは湯のみのお茶をずずずっと飲み下した。
「プライベート、ですか?日常生活でももっと結束した方がいいと?」 だんだんオズマがかわいそうになってきたのか、カナリアがルカを視線で黙らせてそっとオズマの腕に触れた。固まっているようだ。
「そ、それでどんな訓練をするんだ」
高橋を三回繰り返してやや噛みながら、力説する。
「で、何の種目で対決するんですか隊長?人生ゲームですか、桃鉄ですか、それともアイドルマスターですか」 しかもひとりで。おまえも姫と同じく友達いないのかかわいそうなやつ、と、ミハエルがそっと眼鏡の縁で涙を拭う。 「種目は簡単だ!ずばり<素人の、素人による素人料理対決>!!」
容赦なく突っ込みながらアルトはナプキンで紙飛行機を折りだした。そろそろ完璧に飽きてきたようである。 「もしかして隊長、昨日の夜やってた『ドキドキ!裸エプロンの餌食になるのはダレ?アイドルVS若手女優ド素人料理対決頂上大決戦☆』見て思いついたんじゃ」 「「そ れ だ」」
ミハエルとカナリアがぽん、と両手をうってうなずく。
「裸エプロンの餌食にならないように気をつけような姫」 すでに負けること前提で話を進めるふたりにアルトが折りかけの紙飛行機を手の中で握りつぶす。
「いいかおまえら!絶対に負けるわけにはいかないからな!あさっての日曜日までに特訓しておけよ!」 くだらねえ!と、アルトはナイフとフォークを両手に握ると、直属の上司に向かって突き出した。
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