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【2025/04/20 05:31 】 |
なんとかかんとか大作戦

それはひとりの何気ない軽口がきっかけだった。

 いつものようにランカを学校へ見送り、ああ今日も我が妹は可愛いなあとへらへらしながら出勤したとき、同僚がにやにや笑いながらオズマの肩を叩いた。

「ようオズマ。おまえも大変だよなあ。家でも職場でもガキの面倒ばっかで」
「な ん だ と コラ」
「しかしスカル小隊大丈夫かあ?嫌味眼鏡と姫とショタそろいぶみだろー?学芸会でもやるのか?はっはっはっ」
「てっめえ・・・」

 気にしていることをずけずけと言いやがって。心の奥底ではこの同僚の言い分に深く同意していたオズマは、みずから率いるスカル小隊の実力を示すべくひとつの名案を思いついた。

「こうなったら俺の苦労を公表して同情を・・・じゃない、スカル小隊のすごさを見せ付けてやる!」

 カナリアはともかく、その他の学生組を預かっている以上、見た目は少々頼りないかもしれない。だがミハエルの射撃の腕はプロだしルカの情報分析能力は頼りになる。カナリアは背中を預けることのできる実力者だ。
 アルトは・・・。

(えーっと。あいつなんか特技あったっけ)
 顔だけはいい。体力まあまあ。性格難あり、可愛くない。ランカと仲良くしている時点で憎い。
(あ、やっべ!こいつどうしようもねえわ)
 そんなちょっぴりひどいことを考えるスカル小隊隊長だった。

 

 

 

「というわけで!今度の日曜は特別訓練『スカル小隊だってすごいんだZE☆大会』を開催する!」
「あ、ミハエルーそこの醤油とってくれ」
「あいよ。こら姫、ちゃんとシイタケも食べろよ好き嫌いは良くないぞ」
「そうですよアルト先輩」
「ルカ、おまえそのオレンジ色の目立つ皿はなんだよニンジン食えないなんてガキだなー」
「あはははは」

「てめえら!人の話を聞けぇぇぇ!!」

「「「はい?」」」

 ばんっ、とテーブルを叩く上司にはじめて気づいた顔をした三人は、互いにきょとんと目を見合わせた。
 ちなみにカナリアもいるが、彼女は白衣姿でもくもくとフォークを口に運んでいる。さっきからオズマがぶつぶつと何か言っていたが全く聞いていなかった。
 それよりも和気藹々と学生三人の会話を聞いているほうが何倍もおもしろい。活気があるし華もある。カナリアに冷ややかな目を向けられたオズマだったが、ひるむことなく咳払いをした。

「いいか、おまえら。俺たちのチームは平均年齢が低いぶん他のやつらに少々甘く見られているようだ。そこでこのスカル小隊の力を見せ付けるため企画したのがこの特別訓練だ」
「隊長、話の前半と後半の繋がりが見えません」
「隊長、俺その日非番だし見たいビデオがあるので出勤できません」
「隊長、唾を飛ばさないで下さい」

 まるでまともに受け取ろうとしない三人に、オズマが怒鳴り返そうと口を開いた瞬間ぽこんと後頭部を殴られた。

「いい加減もっとましな発案をしたらどうだ。そもそもちょっとからかわれたくらいで何を本気になっている。誰もがスカル小隊の実力は認めているはずだ」
「カナリア・・・。確かにそうかもしれん。だが!このクソ忌々しい新人が入ってからというもの、鼻で笑われている気もしないでもない!」
「俺のせいかよ」
「気のせいかよ」

 ぼそっとアルトとミハエルが同時に突っ込んだ。
 ぷるぷると拳を震わせて顔を歪めるオズマに、カナリアは嘆息してフォークを皿に置く。

「だがまあチームの結束を確認する意味で特別訓練とやらをするのに異論はない。なにかいい考えでもあるのか」
「シミュレーションならいつもやってますよ」

 首を傾げながらルカが問いかけると、オズマはにやりと笑みを浮かべた。

「いや、今回やるのは戦闘訓練ではない。むしろプライベートに関係している」
「はあ」
「意味が分からん」

 そろそろ飽きてきた、とアルトは湯のみのお茶をずずずっと飲み下した。
 それに向かって行儀悪いぞ、と母親のようにたしなめて、ミハエルが先を促す。

「プライベート、ですか?日常生活でももっと結束した方がいいと?」
「でも僕たち学校も一緒だし、団結してますよ。むしろ隊長がいないほうが結束力は高いです!」
「ルカ・・・」

 だんだんオズマがかわいそうになってきたのか、カナリアがルカを視線で黙らせてそっとオズマの腕に触れた。固まっているようだ。

「そ、それでどんな訓練をするんだ」
「あ・・・ああ。そうだな。ええと、今一瞬意識が遠のいたぞ。いいか、ここはひとつ小隊全員の力を合わせてひとつの物事をなしとげるのがいいと俺は思った。ちなみに敵はランカをガキなどと抜かしやがった高橋しゃん兄弟の長男高橋太郎率いる高ひゃし小隊だ!」

 高橋を三回繰り返してやや噛みながら、力説する。
 アルトはそろそろ退席してゆっくり部屋でごろごろしたかったが、さきほどからものすごい目つきで睨まれているため身動きできなかった。

「で、何の種目で対決するんですか隊長?人生ゲームですか、桃鉄ですか、それともアイドルマスターですか」
「ルカおまえそんなもんやってるのか・・・」

 しかもひとりで。おまえも姫と同じく友達いないのかかわいそうなやつ、と、ミハエルがそっと眼鏡の縁で涙を拭う。

「種目は簡単だ!ずばり<素人の、素人による素人料理対決>!!」

 


「はァ?なんだそれ。SMS関係ないじゃん。何で料理?あんた何言ってんだ?」

 容赦なく突っ込みながらアルトはナプキンで紙飛行機を折りだした。そろそろ完璧に飽きてきたようである。
 はっとして、ルカがミハエルに囁いた。

「もしかして隊長、昨日の夜やってた『ドキドキ!裸エプロンの餌食になるのはダレ?アイドルVS若手女優ド素人料理対決頂上大決戦☆』見て思いついたんじゃ」

「「そ れ だ」」

 ミハエルとカナリアがぽん、と両手をうってうなずく。
 同時に、両側からアルトの肩を優しく叩いた。

「裸エプロンの餌食にならないように気をつけような姫」
「大丈夫だ、そのときは私たちが壁を作ってやるから」
「何の話だ!!」

 すでに負けること前提で話を進めるふたりにアルトが折りかけの紙飛行機を手の中で握りつぶす。

「いいかおまえら!絶対に負けるわけにはいかないからな!あさっての日曜日までに特訓しておけよ!」
「特訓ですか?」
「そうだ。包丁の握り方から蕎麦打ちまでマスターしておくように!」
「できるかァ!!」

 くだらねえ!と、アルトはナイフとフォークを両手に握ると、直属の上司に向かって突き出した。

 

 

 

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【2011/10/24 21:08 】 | 短編 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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