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【2025/04/20 05:55 】 |
レジェンド・オブ・フロンティア 第10章

 伝令が戻らない。
 それを聞いた時、シェリルはひどくいやな予感がして、隊の進軍を止めた。
 ルカがやはり心配そうな表情でとなりに並ぶ。

「王子・・・」

 部隊を五つに分け、中央の本道をシェリルと精鋭部隊が進んで二時間もしないうちに、遠くで煙が上がっているのを確認した。それから時間を置かずに四方で同じように煙が上がり、爆発音のようなものも響いてくる。
 明らかに戦闘行為を行っている。やはり【ゼントラン】と軍とが衝突したのだろうとシェリルは先を急ごうとしたが、レオンの元へと走らせた伝令がいつまでたっても追いついてこなかった。
 さらに、本道の前方を警戒するため先に行かせた斥候も戻らない。
 ざわりと強い風が吹き荒れ、揺れる木々の唸り声が非常に不気味だった。

「もう一度レオン殿のところへ使いを出しますか」
「ああ。足の速い馬を出せ。それと前方の警戒を厳に」
「かしこまりました」

 即座に指示が飛んで、黒い毛並みの駿馬が道を外れて東へと走り去って行った。
 もしあれが戻らなければ、事態は想像をはるかに超えた深刻なものだということになるだろう。まさか四つの部隊が全滅するわけもない。レオンのいる場所へたどりつく前に何かがあったとしか考えれらない。

「【ゼントラン】どもの罠か、それとも我々の把握していない敵が潜んでいるのか」
「両方、という可能性もあります。五つの道を我々が進むのは明らかなのですから、何らかの罠を仕掛けているのは予想されたことです。でもそもそも【ゼントラン】に与しているものたちがどの程度の規模なのか、どのくらいの兵力を持っているのか、まるで情報がありません」

 しかし、とシェリルはふいに疑問を持った。
 トクガワ国王によれば、【ゼントラン】には巨人族の末裔もいるという。彼らがひとりでも混じっていれば、いくら薄暗い森の中とは言えその姿や声を確認できるのではないだろうか。それなのに、聞こえてくるのは不穏な爆発音だけ。

「・・・音?」
「王子?」

 愛馬を急かしながら進むシェリルのつぶやきに、耳ざとくルカが反応した。

「・・・やつらがどの程度の力を蓄えているかは知らないが、爆発音はするのに火柱が上がらないのは奇妙ではないのか」
「確かに・・・。しかし、森の中で火薬を使うのは双方にとって危険でしょう。爆薬ではないのでは?」
「そう、だな」

 ルカの言うことは最もだ。なぜもやもやするのだろう。
 だが漠然とした不安を口にしても何の解決にもならない。ましてや、部下に話すことではない。

「ではなぜレオン殿と連絡がつかない。森の中に敵が潜んでいるとはいっても向こうも戦闘が始まったのであればこちらへ何らかの報告をしてくるのが筋ではないのか」
「やはりわれわれ本隊を他の部隊から孤立させるつもりなのでしょう」

 それも正論だ。だがどこかちぐはぐな気がする。

「私たちの敵は姫をさらった【ゼントラン】のものたち、で間違ってはいないな」
「ええ・・・。もちろんです」

 ともかく、塔を目指して進軍を続けるより他はない。ここで立ち止まっていても、事態が進展するとは思えなかった。
 四つの部隊が苦戦しているのなら援護をするべきなのかもしれないが、それよりもまずアルト姫を救い出すほうが先決だ、とシェリルは思った。
 轍が刻まれた、整備された道の前方に人影はない。

(まるで誘っているみたいだ)

 ルカは眉をひそめてちらりと主の顔を見上げたが、何も口にはしなかった。
 そのくらいのことは王子とて勘付いているに決まっている。
 そう、思っていた。




 レオンという男はひとことでいえば野心家であった。
 隙あらば誰を蹴落としてでもより高みへ、地位と名誉を手中におさめるためならば、手段は問わない。だから、どれだけ内心燃えるような憎悪や嫉妬がうずまいていようと、表情ひとつ変えず頭を垂れ、言いたくもない世辞を言い連ね、国王でさえ盤上の駒のように操れると信じて疑わなかった。

(強いものについたほうが勝ちなのだ)

 では、現在もっとも権力のある陣営はどこか。
 このフロンティアを統治するトクガワ国王か。それとも、圧倒的な国力差を背景に常にフロンティアに牙をむくチャンスをうかがっている隣国ギャラクシーか。国内のどこにでも存在していると言われている【ゼントラン】か。
 国を統治し、拡大し、そして自分の足元を揺るぎない地盤で固めるに一番必要なもの。フロンティアも、そしてギャラクシーも手にするために使える駒。

(あるじゃないか。こんなにすぐ近くに。けれど、手の届かない場所に)

 レオンは白い煙の上がる場所から身を守るように森の奥に分け入り、懐から手のひらサイズの小さな石を取り出した。ゆらり、と揺らして吸い込まれそうなその輝きに目を細める。

「さあ、お膳立てはもういいでしょう」

 そろそろそれを渡して下さい。
 そう言って、彼はにやりと笑みを浮かべた。
 剣戟の音などは、どこにもない。



 ある者はある者たちを利用しようとしていた。
 だが彼は完全に計算違いをしていた。
 本当に利用されていたのはどちらか。
 そして、その真意に気づかないあわれな愚者は、やがて破滅の道をたどることになる・・・。




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これより三十分間の休憩に入ります。
トイレは混雑しますので、行かれる方は係員の指示に従ってお並びください。
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開始五分前のブザーが鳴りましたら、お席へお戻り下さいませ。
 
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【2011/10/24 21:37 】 | レジェンド・オブ・フロンティア | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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