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【2025/04/20 05:38 】 |
レジェンド・オブ・フロンティア 第8章
 どこか不安げな表情の従者に、シェリルは笑顔を向けた。

「そう心配するな。敵の戦力がはっきりとしないとは言えしょせんは烏合の衆。対するこちらはフロンティアの精鋭と言うではないか。全面戦争をするつもりもない」
「分っております。ですが王子」

 やはり内政干渉ではないかと心配するルカだったが、強い決意を漲らせる王子のまなざしに言葉を飲み込んだ。
 決して王子を信用していないというわけではない。ギャラクシーにおいて、シェリルに剣で適うものなどいないのだ。
 政治力においては兄の方が優れているだろう。だが、その兄ですらシェリルの腕前は誰よりも評価している。
 ただ、とルカはぐるりと周囲を見渡した。
 彼らをとりまくのは、シェリルの言うフロンティアの精鋭。
 とは言っても数は千以上に上るだろう。広いとは言えないフロンティアの兵力の何割になるだろうか。
 姫君ひとりを悪党にさらわれたからとここまで編成するということは、王は【ゼントラン】が単なる烏合の衆とは考えていないことを意味するのではないか。
 ギャラクシーには存在しない巨人族の存在も気になる。

(僕が王子をお守りしなければ)

 隣国の客とはいえ、軍を預かる身であるシェリルは、自分のことだけを考えて行動することは許されない。
 窮屈な思いをしてまで指揮することを願い出たのは何よりもトクガワ王と、そしてアルト姫の信頼を得るために他ならない。
 そして軍の兵士らや民衆を味方につけることまで計算しているのだろう。
 やがて姫君の婿として歓迎されるための根回しである。

「好きな女性と結婚するのに、まず外堀から埋めなければならないなんて」

 それでも、シェリル王子には民たちと同じように純粋に好きになった人と幸せになってほしいと思う。
 そしてそのためならば、王子に帝国随一だと評された情報収集能力と分析力を駆使して役に立ちたいと、ルカはひたすら戦略を練ることに集中するのだった。 

「シェリル王子」

 馬に乗るひとりの男が数人の部下と連れて近づいてきた。

「レオン殿か」

 フロンティア軍を束ねる、国王の側近である。
 アルト姫救出作戦の副司令として任務についた男だが、シェリルは彼のことをいまいち掴みかねていた。
 軍を統括すると同時に政府の参謀役であることからおそろしく切れる人物なのだろう。
 しかしまったく感情を表に出さず常に含んだような笑みを浮かべているレオンに対し、どことなく信用しきれない何かを感じてもいた。

「そろそろ【ゼントラン】がアジトにしていると思しき塔が見えてきます。この森を抜ければすぐですが、この視界の悪さでは急襲をかけられたときに兵の統率が乱れる危険があるかと」
「ひとかたまりになるのは危険だということか」
「はい」

 レオンは部下が差し出した巻紙を開き、見せた。

「このガリアの森は人や馬車が行き来できるよう整備された道は一本しかありません。ですがこれほどの規模の兵をぞろぞろと歩かせるのは非常に危険でしょう。横道にそれてこの四つのルートに分かれて塔を取り囲む方法を提案します」

 太く描かれた線を軸として細い線が左右に二本ずつ伸び、目的地であるゼントランの塔を指すのだろうマークへ向かって矢印が書き込まれていた。
 詳細なその道順に感心してうなずいたが、ふいにルカが口を開いた。

「失礼ですが参謀殿、この四本の獣道はいつから使用されているものなのですか?はじめから地図に記載されているように見えるのですが」

 突然割って入った若い声にむっとしたのか、レオンの細い眉尻がぴくりと上がった。
 だが憤慨することもなく彼は無表情に頷く。

「逆です。もとはこの獣道がはじめから切り開かれて使用されていたのです。ただ便利であると同時に慣れない者が通るにはあまりに危険だということで本道が拓かれたのです」
「なるほど」

 ということは別に抜け道でも秘密の道でもないということか。
 ルカはシェリル王子の顔を仰ぎ見た。眉間にしわをよせ、拳を唇に寄せて考えている。

「確かに分れて進んだ方が効率はいいようだな」
「それでは王子は本隊を指揮して本道をお行き下さい。残りを四つに分けてそれぞれ進ませましょう」
「分った」

 レオンの言葉に了解して、シェリルは精鋭中の精鋭と名高い三百の兵を連れて一番広い道を通りぬけることにした。
 太陽は高く昇っているなずだが木々の枝が空を覆い、雨が降りそうなほどに暗い。
 時折差し込む細い日の光を頼りに、彼らは塔へと急ぐことにした。
 ざわりと冷たい風が吹いて、足元の枯葉が舞い踊る。
 これからの戦いを意識しているせいなのだろうか、漠然とした不安がこみ上げてきて、ルカは腰に下げている剣の柄にそっと触れた。




「軍が動いたようですね」

 まったく緊張感のない声で青の騎士は呟いた。
 はっとして姫は窓の外を見たが、森と月がただそこにあるだけで何も変化はない。

「なぜ分るのですか」
「俺に魔法が使えると言ったら信用しますか」
「いいえ」

 あなたは人間でしょう、とアルト姫は冷たく言った。ミシェルは肩をすくめて、己の耳を指でつついた。

「これでもハーフなんです。昔あなたは俺のこの耳を見て、怖いと言ったんですよ」
「・・・え?」

 なんのことだろう。身に覚えのないそれに怪訝な顔をする。

「ほらね。お姫さまは下々の人間のことなど眼中にもないのでしょう?」
「私はあなたと過去に会ったことがあるのですか?」
「そう言いましたよ」

 思い出してください、と、ミシェルはいたずらっぽい顔で言う。
 軍がこちらへ向かっているにも拘らず、この落ち着きぶりは何なのだろう。よほど自信があるのか、それとも。
 言い知れない不安が膨れ上がる。
 すべて、もうどうにもならないことを知った上で捕らえられるのを待っているのだろうか。この不遜な男が?

「ここにあなたの仲間はいるのですか?」
「ここにはいませんが、すぐ近くにいますよ」
「私はあなたの仲間に会ったことはありますか?」
「答えはノーです。他にご質問は?」

 楽しそうに眼を細めた青の騎士を睨むと、彼はくすくすと笑った。

「なぜそんなに落ち着いていられるのですか?」
「簡単なことです。彼らはここへは辿りつけません。ついでにあなたと話すのがとても楽しい。こんな気分になるのは久しぶりです」
「私は楽しくありません」

 ふい、とそっぽ向いて唇を尖らせたアルト姫だったが、押しつぶされそうな不安がもうひとつの別の感情に埋もれていくのを感じていた。
 こんなふうに、誰かとぽんぽん会話を続けることは珍しい。父とでさえ、このように問答を繰り返したことはないのに。

「楽しくありませんか?」

 優しい緑の目で尋ねる騎士に、返す言葉は見つからなかった。



*************************



「私の出番はまだか!」

 ふんぞり返って言うクランに、キャシーは苦笑いを返した。
 確かにキャストが足りないためSMSのメンバーにも出演依頼をかけたが、クランたちピクシー小隊の場合は設定が特殊なため最後まで悩んでいた。
 だがここまで話が進んでしまってはもう引き返せないと彼女たちの出番を決定したのだったが。

「なあクラン、言っちゃなんだけどそのままでは難しいと思うぜ」

 まるでこれでは瓦礫の山だ。

「これを着用して装置に入るのか」
「いやだから無理だって」
「じゃあ巨人化してこれを着るんだな」

 かっこいいぞこれ、と目をきらきらさせるクランにいちいちミハエルが茶々を入れる。

「アマゾネスクラン・クランのできあがりだな」



 


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【2011/10/24 21:36 】 | レジェンド・オブ・フロンティア | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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